HANA

日本には、春夏秋冬の四季だけではなく、二十四の節気と、 七十二もの候という季節があります。

 
 

 第7候 啓蟄 初候

『蟄虫戸を啓く』(すごもりのむしとをひらく) 

新暦ではおおよそ3月5日~ 3月9日ごろ

 

 

 啓蟄 初候  蟄虫戸を啓く:冬ごもりしていた虫が、姿を現し出すころ。 
      
 虫にかぎらず、さまざまな生きものがめざめはじめます。

 

 土から出て来る地虫を待ち構えるように小鳥たちも、

 忙しく地面をくちばしでつつきます。

 

 
 

 山菜

 

春の訪れを感じさせる山菜。


おひたしや和え物に最適です。


わらびやぜんまいは、生のものを調理する時は必ずあく抜きを。


重曹や灰を全体にまぶし、熱湯をたっぷり注いで一晩おいてあく

抜きをします。


水でそそいで、おひたしや和え物に。


『石走る垂水の上のさわらびの
   萌え出づる春になりにけるかも』
       志尊皇子(しきのみこ)

 万葉集 巻八 春雑歌(はるのぞうか)


野の草花を見つめ、春の到来をよろこぶ歌が並びます。

 

 

山菜

 

 

 
 
 

 春蘭 しゅんらん


ラン科の常緑多年草で、深い山中に生えていて花期は3月〜4月。


その姿が清らかで、俗気を帯びないのを賞美され、

花言葉も「飾らない心」。

 

 

『 春欄を 堀り提げ もちて 高嶺の日 』
             
             高浜虚子

 

春蘭
 
 
 
 

 
 
 

 第8候 啓蟄 次候 
『桃始めて笑う』(ももはじめてわらう)

新暦ではおおよそ 3月10日〜3月14日ごろ

 

 

啓蟄 次候『 桃始めて笑う』:桃のつぼみがほころび、花が咲きはじめるころ。 
  花が咲くことを、昔は笑うといっていました。 つぼみがほころぶ。口元がほころぶ。

 
 
 
 

桃の花

桃の花は、葉に先だって咲きはじめる五弁花で、


蕊が長く、鄙びた愛らしい花です。

 

桜や梅にくらべて花が大きく、花の色は、白い色の白桃、

 

濃紅色の緋桃、紅白咲き分けの源平桃もあります。

 

『春の苑 紅にほふ 桃の花

     下照る道に 出で立つ乙女』

            大伴家持 「万葉集」

 
 
 
 

 草餅

 

 

 

古くはハハコグサ(母子草)で草餅をつくっていましたが、

 

今日では通常の餅にヨモギを磨り 潰したものを混ぜ、

 

その中に餡(あん)を入れます。

 

雛人形に飾る赤白緑の菱餅の最下段として

 

広く用いられました。

 

ヨモギは特有の香りがあり、草餅にして食べる他、

 

春につんだ新芽を茹で、おひたしや汁物の具、

 

また天ぷらにして食べることもできます。

 
 
 
 
 
 

 
 

 第9候 啓蟄 末候

『菜虫蝶と化す』(なむしちょうとかす) 

 新暦ではおおよそ 3月15日〜3月19日ごろ

啓蟄 末候『菜虫蝶と化す』:冬を過ごしたさなぎが羽化し、蝶に生まれ変わるころ。  
      やわらかな春の日を浴びて、羽がみずみずしく輝きます。

 

 夢虫 ゆめむし

昔の人は、蝶のことを「夢虫」や「夢見鳥」と呼んでいましたが、その呼び名は中国の
思想家、荘子の説話「胡蝶の夢」に由来するそうです。

夢の中で蝶としてひらひらと飛んでいた所、目が覚めたが、
はたして自分は蝶になった夢をみていたのか、
それとも今の自分は蝶が見ている夢なのか、という話です。

 

夢と現(うつつ)が混じり合う幻想的な蝶のイメージは、
昔も今も変わりありません。

不知、周之夢為胡蝶与、胡蝶之夢為周与  

                   
『荘子胡蝶の夢』

   
   
   
   

土筆 つくし

 

♪ つくし誰の子、杉菜の子‥ ♪つくしは「杉菜(すぎな)」
の胞子茎(ほうしけい)で、「つくし」の名は

「澪標(みおつくし)」(船が港へ入る通路を示した杭)の
「つくし」で、 突き立った杭のように見えることから

きています。

 

旬の味わいとして、つくしの卵いためや甘辛佃煮、

つくしと菜の花の卵とじ

など春らしい彩りの一品です。

 

『土筆煮て 飯くふ夜の 台所』

                  正岡子規

 

 

 


 

 

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        * 主な参考文献 講談社 『日本大歳時記』 東邦出版 白井明大 著『日本の七十二候を楽しむ』